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Faculty Voice Series Episode 9. 佐藤 健公 教授
学生のみなさんが教室で見る教員の姿、そして、本学を目指す受験生が、パンフレットや著書から知る教員の姿は、ほんの一面でしかないのかもしれません。
そこで、Faculty Voice Seriesをスタートし、本学の教員の真の姿に迫るエッセイをリレー形式でお届けすることにしました。専門分野や研究内容だけでなく、趣味、人生観、若き日の想い出など、様々な角度から語られるそれぞれの教員の人柄に、ぜひ触れてみてください。Episode 9.は、佐藤 健公(さとう けんこう)教授です。
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佐藤教授は秋田県出身で、1977年に青森県の弘前大学で文学士を取得した後、英語教員として秋田県の高等学校で38年間勤務しました。その間、教育委員会、校長等の管理職として県内の高校など9カ所で勤務し、定年退職後は、本学の教職課程教授に就任しました。高等学校英語教員の養成や育成に力を入れ、教職課程のほか、本学学生のインターンシップ、ギャップイヤー活動、国連ユースボランティア派遣などのサポートも担当しています。
また、2016年に発足した非営利団体「秋田若者活性化委員会(FromProject秋田)」では、顧問として、本学学生が高校生に対して課題解決型学習(PBL)を提供する活動を支援しています。
出会い
自分が入学したその大学には様々な経歴をもつ人たちがいたことは前にも触れた。第二の太宰を目指して書き続けていたS、学生運動と研究の間で悩んでいたK、空手と読書に明け暮れていたYなど。文学科にはこのような輩が多く、私はいつも彼らと共にいた。高校を卒業してすぐ大学に来た私とは違い、彼らはまず興味があることに没頭することを選んだ。そしてさらに突き詰めたいものを求めて行く先が大学であった。教授陣からも「寸暇を惜しんで古今東西の知に触れ、語り合え」と言われていたが、読むべき本や考えるべき事柄など、年齢の異なる同級生から得たものは多い。将来に対する不安を抱えて悩んでいた時期に、彼らに出会えたのは幸運であった。
当時流行っていたノーム?チョムスキーの言語学や普遍文法に惹かれて英語学を専攻に決めて、将来は大学で研究することを夢見ていた。しかし担当の教授が厳格であったためか、当初20名いた学生が次々に辞めて私は最後の一人になった。辞めたら何も残らないと踏ん張ったが、後になって考えるとそれが大きな分岐点だった。毎日狭い研究室で2人の先生から厳しく熱い指導をいただいた。おかげで、家庭の事情で急遽受験することになった教員採用試験に合格できた。あの時に大学院に進んでいたらどうなっていたかは分からない。しかし、特定の目標に執着して将来の可能性を狭めるよりは、目の前のチャンスを手に入れようと自分を納得させた記憶がある。
今回原稿を書くにあたり、趣味について書こうかな?と家人に話したら、「あなたの趣味は高校教師でしょ?」と笑われた。確かに、毎日朝早く帰りも遅く、休日も部活動などで忙しく他のことをする暇があまりなかった。定年退職まで教師以外のことはほとんどやっていないので、「趣味」と言われれば返す言葉がない。
部活動では難儀をしたが、生徒との出会いから学んだことは多い。例えば、練習メニューは生徒たちが考えた。テニスでは時間単位で練習計画を立てるのではなく、小さな達成目標を組み合わせる練習メニューにしたところ効果てき面で、練習内容が充実し練習時間も短くなった。また陸上競技部の顧問の時は、素人の私にできるのは生徒が走ったり投げたりするのをビデオ撮りすることだった。生徒たちは自分の走りやフォームを見て改善していった。テニスでも陸上競技でも毎年のように上位大会に出場し、おかげで全国各地を旅行することとなった。そして結果的に、テニスもジョギングも私の数少ない趣味になっている。
教師の醍醐味は生徒の人生に直接関われることだ。生徒たちは様々なことに挑戦し、失敗や成功を繰り返しながら成長していく。その過程で教師にできることは、生徒一人一人の話に耳を傾け、受け止め、必要な情報を提供することだ。その後は、生徒が自ら決めて前に進むのを見守るだけだ。そう考えるようなったのは教職も随分後になってからで、それまでは自分の考えを一方的に押し付けていたような気がする。今でも元生徒たちに会うたびに冷や汗が出る。
高校教員として残り数カ月となり、英語教員として最後の奉公をすることにした。大学受験を目前に猛勉強をしている生徒とその指導に当たっている先生たちに触発されて、毎日早朝補習を請け持った。テキストを作り板書計画を練って翌朝の補習に備えて早く寝た。わずか一月ほどであったが、受験の報告に来た生徒たちの笑みや悔し涙は今も覚えている。
38年間の高校教師には心残りはたくさんあるが、今さらタイムマシーンで過去に戻って当時の未熟さを詫びて歩くのは現実的でない。しかし気が付けば専攻こそ違うものの、一度は諦めた「大学生とともに学ぶ」という機会に恵まれている。今私にできることは、学生諸子の話に耳を傾け知的刺激を提供し、自由にそして深く考える機会を与えることであろう。彼らの人生に多くの幸運な出会いがあることを願ってやまない。
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