今、未来への備えとしてどのような教育が求められているのでしょうか。未来を予測するのは難しいことですが、技術の進歩が加速する中、テクノロジーがこれからの社会に及ぼす影響はますます大きくなるでしょう。学生たちが卒業後の人生において成功を収めるには、現在の「文系」「理系」の壁を越えて学ぶ必要があります。
GC領域のカリキュラムでは、最新のデジタルテクノロジーを駆使すると同時に、文化などの人文科学を深く理解し、広範囲にわたる様々な分野を接続させながら学ぶことにより、変化する社会に柔軟に適応?対応できるような学生を育てていきます。人文科学は、テクノロジーと共存する私たちの生活を有意義なものにし、テクノロジーを改めて理解することは、学生たちにとって未来への鍵となるでしょう。
現代社会において、「つながり(Connectivity)」のデジタル化と常態化、そしてオートメーション、人工知能(AI)の台頭に代表されるようなデジタルテクノロジーの急速な進歩は、私たちに難しい問いを突きつけます。「新しい技術と関係性から恩恵を受けるのは誰か?」「誰が取り残されるのか?」「どのようにして人間の価値観に基づいた社会を形成することができるのか?」「人間の判断をどの範囲までAIに置き換えるべきか?」本領域ではこのような答えのない疑問に対して、人文科学とテクノロジーのつながりの探求というアプローチから、考察を深めていきます。
批判的思考、論理的分析、文化理解だけでなく、効果的なコミュニケーションによるクリエイティブな課題解決力は、生涯に渡る学びの土台を作るでしょう。本領域で学生は、個々の人生、地域社会、そして世界において、有意義かつ持続可能な影響を与えるために必要な知識とスキルを修得します。
※ここでは、教授からの英文メッセージの日本語訳を掲載しています。
フローラン?ドメナック Dr. Florent DOMENACH
グローバル?コネクティビティ領域長/ICTコーディネーター
教授
人類は有史以来、言語やコミュニケーション手段を発達させながら多様な文化を育んできました。一方で近年はデジタルテクノロジーやAI、ビックデータ等、各種技術の飛躍的な発展が私たちの生活や社会に大きな変化をもたらしています。
本領域では、文化や文学、哲学といった生きることの意味や価値を追求する人文科学と、私たちの現代社会に急速に浸透しつつあるAIや最先端技術を同じ土俵で学修します。分野の違うこれらの科目を接続させながら学ぶことにより、ますます発展するであろう各種技術が私たちの日常生活、政治、経済に及ぼす影響を多角的な視点で分析し、それらをどのように活用してこれからの社会を創造していくのかを洞察する力を身につけます。
GC領域は、「人、文化とコミュニケーション」、「科学技術と社会創造」の2つのクラスターからなります。学生は自身の興味関心に沿って、各クラスターの科目を履修するとともに、総合セミナーにおける研究テーマを絞り込み、最終的な成果物としてリサーチペーパー(卒業論文)を作成します。
人文科学分野の科目で構成される本クラスターでは、歴史、文化、芸術をはじめ、広範囲にわたる知識と分析力、ならびに言語やコミュニケーション力の獲得を目指します。日本および世界の文化的、学術的知識を広げ、グローバル社会の背景と異文化への理解を深めます。
私たちの働き方やコミュニケーション、情報アクセスや情報処理をはじめとする現代生活におけるデジタルテクノロジーを題材に、様々な科学技術の影響によって生じる社会的、経済的、哲学的な問題を考察します。最先端科学技術による新しいデジタル環境を活用しながら、より豊かな未来社会を創造する方法を探求します。
担当教員の指導の下、各自の興味関心に沿ったテーマを選択し、論文を作成します。
>>テーマ例
矢壁 達也 Tatsuya YAKABE (福岡県/2018年入学)
現在はGB課程※に所属していますが、GC領域の科目を多く履修しています。AIUの強みは、自分の興味?関心に従って学びを広げられることです。特にGC領域の授業では、経済学と心理学、数学とデジタル社会といった、一見独立しているように見える複数の分野の関連性に着目して学ぶことができるので、自然と違った角度からものごとを見て考えられる力が身につきます。マネジメントや金融学の授業の中では、リーダー論や人間の行動といった視点を絡めて考えられるようになりました。
スペイン語や日本手話など、英語以外の言語も学ぶなかで、その背景にある歴史や話者のコミュニティを知り、異なる文化や言語間のコミュニケーションに関心を持つようになりました。個人的な活動として手話の勉強を続けながら、要約筆記の資格も取得し、聴覚障がいのある方に情報を伝える活動をしています。その分野の専門職にも興味を持っていますが、将来は様々な分野に精通し、自分の専門の外側にも常に意識を向けることができる人間として活躍できる道を選びたいと考えています。
※課程:2020年度以前に入学した学生の所属。GC領域は2021年度以降入学の学生が選択できる領域で、専門的な授業を受講する学生はまだいないことから、ここでは他領域(課程)の上級生の声を紹介しています。
私の成長過程
1年次 価値観のぶつかり合いに直面した寮生活
留学生のルームメイトとの寮生活は、生活習慣の違いなどの困難も多かったですが、多様な文化や価値観に触れることができました。
2年次 手話部の代表として活動
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学内だけではなく、外部の手話者の方々と交流することで、世の中にはまだ自分の知らない世界があり、自分にはない知識やスキルを持った人がたくさんいることを知りました。
3年次 学びを深めた1年
授業に向かう姿勢を改めて考える中で、「質の高いグループディスカッションとは何か」ということに疑問を持ちました。疑問に思ったことは書籍で調べ、身につけた知識を授業で実践することで、主体的に学ぶことができました。
4年次 言語としての手話を学ぶ
日本手話の特異性や聴覚障がい者の運動の歴史など、手話に関連する知識をつけることで、言語としての手話を知り、どの分野の専門家へもリスペクトするようになりました。