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学生×卒業生×学長 座談会「AILAを支えるAIUエコシステム」

6月1日(水)に発行された最新の「大学案内パンフレット2022-2023」ではAIU独自の教育環境を指す「AIUエコシステム」という言葉が初めて登場します。この環境で得たものは何か。2021年度から始まった新カリキュラムの柱となる「応用国際教養教育(AILA)」でその環境はどのように強化されるのか。カセム学長、卒業生、在学生がそれぞれの視点から「AIUだからこそ」を語った座談会の様子を詳しくご紹介します。

動画で見る「AIUエコシステム」

座談会参加者の集合写真。卒業生2人はビデオ通話でオンライン参加した。

プロフィール

在学生
  • 坂藤 卓都さん:富山県出身、2020年入学。国際教養大学竿燈会代表
  • 赤羽 柚美さん:東京都出身、2019年入学。2022年3月に3年次で卒業し、4月から報道機関に就職。
卒業生
  • 並木 志帆さん:東京都出身、2017年入学。卒業後は、フランスの欧州経営大学院(INSEAD)に進学し、Master in Managementプログラムに在学中。
  • 谷地田 潤さん:秋田県出身、2005年入学。卒業後は、モルガン?スタンレーに入社。現在はACG Management Pte. Ltd.にて、シンガポールで日本企業への投資業務に従事。

※所属は2022年3月時点

AIUが教えてくれたこと

カセム:AIUには他の大学には無い、大学の特長が互いにつながり合うことで成り立つ独自のエコシステムがあります。今日はそのエコシステムの源がどこにあるのかを紐解いてみたいと思い、在学生?卒業生に集まっていただきました。
谷地田さんは2期生ですね。開学したばかりの無名の大学へ進学するという、大変勇ましい決断をされたわけです。また卒業後はずっと世界の最前線で活躍されています。14期生の並木さんはAIUを卒業後、そのままフランスの最難関の経営大学院に進まれて、1年という短期間で修士の学位を取得しようとされています。お二人がAIUで得たものは何でしょうか?AIUでの経験がご自身の人生に与えた影響はありますか?

谷地田:「自分の意見を持つこと」ですね。世の中の情報を鵜呑みにせず、別の視点からも考えて、自分の意見を相手に伝える力は、その後の私の人生の土台になっていると思います。

並木:AIUでの4年間は私の人生の分岐点と言えます。以前は保守的な性格でしたがAIUで変わりました。それまでとは全く違う環境に飛び込んで、大学生活を送るうちに、新しいことにチャレンジするのが楽しくなりました。失敗も長期的に見れば自分の成長に繋がることも知りました。大学卒業後は就職も考えたのですが、1年間大学院で学んでからでも遅くないですし、チャレンジしてみたいと思い決断しました。

ビデオ通話でオンライン参加した卒業生2人が画面に大型モニターに映っている写真

参加した卒業生、並木さん(左)と谷地田さん(右)

「冒険心」はなぜ育つ?AIUの環境の秘密

カセム:潜在的に持っていた決断力や冒険心がAIUの環境で引き出されたのかもしれませんね。なぜAIUの環境ではリスクを覚悟で挑戦する「冒険心」が育つと思いますか?

並木:AIUには学生同士が協力し合う雰囲気があります。私は入学時には英語が話せなかったので、授業についていけるか不安でしたが、友達と助け合いながら乗り越えていきました。協力的な雰囲気の中では、いろんなことに積極的に取り組めると思います。リスクを覚悟で挑戦する経験は自信にもなりますし、冒険心が育つきっかけになるのではないでしょうか。

谷地田:誤解を恐れずに言えば、開学当時のAIUには「何でもやっていい」雰囲気がありました。大学全体が0から1を作っていく中で学んだので、何事もやる前から無理だと思わないようになったのは大きいですね。

坂藤:今のAIUにも通じるところがあります。AIUには自分の考えをオープンにしやすい雰囲気がありますね。自分の考えを受け入れてくれる環境があるからこそ、やりたいことを追及できますし、チャレンジ精神が培えるのではないかと思います。

座談会で話す坂藤さんの写真

在学生の坂藤さん

カセム:AIUの冒険心やチャレンジ精神は開学時から今に受け継がれているようですね。チャレンジ精神を育てるAIUの看板とも言える「留学」は、コロナ禍で海外渡航が大きく制限されてしまいました。赤羽さんも悔しい思いをされたのではないかと思います。代わりにAIUで磨かれた冒険心はありますか?

赤羽:短い間でしたが留学生との交流から学ぶことが多かったです。国際関係論を学ぶうち、自分にはまだ知らない世界が沢山あるということを肌で感じました。そして、この目で世界の実態を見たいという思いが一層強くなり、目標だったジャーナリストになることを決意しました。希望していたフランスの政治学院への留学を実現できなかったことは残念でしたが、自分の目で世界を見ることはコロナ禍が収束してからでも可能ですし、これからは仕事を通じて夢を実現したいと思っています。

カセム:17期生の坂藤さんは東北三大祭りの一つである秋田の竿燈まつりを継承するAIU竿燈会の代表を務めていますね。非常に制約の多い中での活動だったのではと思いますが、試行錯誤しながら仲間と練習に励む姿はAIU生の逞しさを象徴していると感じました。

坂藤:コロナ禍での制約がある中でも「今、自分に何ができるのか」を考えるようにしていました。「練習しない」という選択は簡単ですが、これまで僕たちのために時間を割いて竿燈の魅力を教えてくれた先輩や地元の方々のこれまでの努力を思うと、自分たちが後輩に繋げていかなくてはという責任を感じます。

カセム:AIUでは先輩?後輩の関係が対等な印象を受けるのですがいかがですか?

谷地田:開学当時は1期生?2期生の隔たりもなく、みんなで協力して大学を作っていこうとしていました。学修?居住一体型のキャンパスということも親密な人間関係の形成に影響していたのかもしれません。

画面越しに話す谷地田さんの写真

卒業生の谷地田さん

並木:学生がキャンパス内に住んでいるので、普段から接点を持ちやすいのだと思います。サークルや課外活動でも学年に関係なく交流があり、先輩?後輩を問わず刺激をもらうこともあります。絆が強いのも、AIUコミュニティのいいところだと思います。

なぜAIUでは「決断力」が磨かれるのか?

カセム:「決断力」に話を戻しましょう。素早く全体像を把握し決断を下し、間違いがあればすぐに軌道修正する―正しく迅速に決断できる人間を育てることが社会にとっていかに重要か、コロナ禍で明らかになったのではないでしょうか。変革の速度が非常に速い現代社会では、迅速に判断を下すことが不可欠です。AIUの環境で、決断力を育てる要素になっているものは何でしょうか?

谷地田:学生生活そのものが基礎になっていると思っています。AIUでは地元出身の学生でも1年次の寮生活が義務ですし、留学生活もあります。それからAIUならではの環境で言うと、自分がどうしたいか、どうなりたいかを常に考えている学生が多いですね。自分に関する決断は、自分自身をよく理解した上で選択肢を吟味すれば、自ずと決められるようになります。自分以外のことも、どういう選択肢があるのか、それぞれのリスク、リターンは何かということを考えるという、決断に至るまでの思考プロセスはAIUでの学生生活を通じて学べるのではないかと思います。

並木:決断に迷った時、信頼できる人に相談できる環境も大事だと思います。AIUは学生の人数が少ないこともあって、学生同士だけでなく教職員との関係も近いので、一人ひとりの人生を支援してくれるような温かい雰囲気があります。フランスの大学院への進学を決断した時も、自分の中から湧き上がる情熱が一番大きな要素ではありましたが、AIUの相談しやすい環境が後押しとなって、未知の世界にも自信を持って挑戦できたと思います。

カセム:日々決断に迫られながら最前線で自分の人生を切り開いている卒業生の言葉は力強いですね。お互いに協力する文化、オープンに発言できる文化、人間関係など、AIUの環境そのものがリスクを取る際のセーフティーネットの役割を果たしているように感じます。在学生のお二人は、先輩の話を聞いて感じることはありますか?

坂藤:決断を下すためには、問題を様々な角度から捉えて、腑に落ちるまで理解して考える力が必要だと思います。AIUの授業ではディスカッションやプレゼンテーションを通じて、答えのない課題を議論する機会が多いので、授業自体が意思決定の練習になっていると感じます。

赤羽:AIUの授業では1つのテーマを様々な角度から捉える力を鍛えることができました。香港のデモが報道されていた時、香港からの留学生と中国にルーツを持つ学生の双方の主張を聞く機会があり、とても考えさせられました。秋田でイージス?アショア配備の問題が持ち上がった時も、当事者の意見を直接聞きたくて住民説明会に足を運びました。自分が判断材料として持っている情報が本当に正しいのか疑問に思うだけでなく、偏った見方をせずに考える力がついたと思います。

座談会で話す赤羽さんの写真

在学生の赤羽さん

AIU生が語る「リベラルアーツ教育」の本当の良さ

カセム:昨今、フェイクニュースなど真実が分からなくなるような報道も増えていますからね。誰かの言葉を鵜呑みにせず自分で確かめ、自己内省も含め批判的思考で冷静に決断できる人間を育てることこそ、AIUが開学以来一貫して掲げてきたリベラルアーツ教育の基盤だと思います。実際にAIUでリベラルアーツ教育を受けた皆さんが思う、リベラルアーツ教育の良さはどんなものでしょうか。

谷地田:一般的に大学での勉強というと、知識を蓄える作業を指すことが多いですが、「知識」には既に答えが出ているものも多くあります。しかし、社会人として求められるのは、正解がない問題や課題を解決するためにベストを尽くすことです。つまり、リベラルアーツで学んだ幅広い知識をどう使うかが重要です。より良い社会をつくるためには、個人がより良い自分を目指し思考?行動することが欠かせないとするならば、全人教育を目指すAIUのリベラルアーツ教育は価値があることだと思います。

並木:多角的な視点で考える方法を教えてくれる点が、リベラルアーツ教育の良さではないかと思います。例えば、企業活動を理解しようとするとき、資本家の視点では「企業のゴールは利益を追求し、その利益を株主に還元することである」という定義で事足りるかもしれません。一方、社会学の観点で捉えると、「企業の利益追求は果たして社会に良い結果をもたらすのか?」「長期的な視点で見た時、持続可能と言えるのか?」と、新たな課題や疑問も見えてきます。多角的な視点で捉えないと、全体が見えない良い例です。

画面越しに話す並木さんの写真

卒業生の並木さん

赤羽:同感です。政治学の視点で紛争の原因を理解していても、そこで実際に苦しんでいる人々の問題まで見えているとは限りません。環境、貧困、女性の人権、どれか1つの問題にのみ注目していては解決できないものばかりです。ジェネラリストとしての視点を持っていれば、専門家同士をつなぐ役割を果たすこともできます。物事の見方や考え方の引き出しが多い人は強いと思います。リベラルアーツを学ぶことで、現実的な答えを出せる人間になるのではないでしょうか。

坂藤:私がAIUを選んだ理由こそ、リベラルアーツを学びたかったからなのです。元々やりたいことが多い性格で、専攻を1つの分野に絞ってしまうことに抵抗がありました。AIUは自分の興味に合わせて広い知識を得られるというところに魅力を感じました。実際にAIUには好奇心旺盛な学生が沢山いますし、ともに学ぶことで自分の長所をより伸ばせていると感じます。

日本発!新しいリベラルアーツの潮流「AILA」

カセム:社会の担い手を育てることは大学にとって使命です。現実社会は必ずしもバラ色というわけではなく、時に困難に直面しながらも、挑戦し続けなくてはいけません。AIUのリベラルアーツ教育にはグローバル?ビジネス、グローバル?スタディズといった「領域」がありますが、昨年から新たにグローバル?コネクティビティが加わりました。最先端のテクノロジーがますます人間社会に入り込んでくる未来社会をどのように創るのかをテーマにした非常に挑戦的な領域です。また、AIUにおけるエコシステムの中で、本学独自の教育手法として「応用国際教養教育(Applied International Liberal Arts: AILA)」を打ち立てました。「応用」と冠したからには、大学での学びを通じて得た知識や、課題意識を、行動によって実社会と密接に結び付けていく必要があります。ここ秋田には様々な地域課題があり、周辺には課題解決力を身につける絶好の環境があると言えます。学内外で地域課題に取り組む機会を増やすことについて、在学生の視点から意見を聞かせてください。

座談会で話すカセム学長の写真

カセム学長

赤羽:昨年の冬、秋田の県南地域が豪雪に見舞われた際、果樹農家さんが存続の危機にあると聞いて、雪かきボランティアの団体を立ち上げました。「助けに行きたい」という一心で駆けつけましたが、誇りを持って農業をしている農家の方々に出会えて、逆に、秋田を深く知る機会をいただきました。地域の課題を解決しようというモチベーションも大切ですが、一歩踏み出して関わってみたら、自分たちが得るものの方が大きいこともあります。自分たちに何かできることがあれば積極的に関わってみるという姿勢が大事だと思います。

坂藤:こういった取り組みの場が増えることは、大学や地域にとってだけでなく、私たち学生にとっても有益だと思います。赤羽さんの言葉にもあったように自分の事として関わる姿勢は大切だと思います。竿燈会を通じて、秋田の方が地元の伝統文化をどうやって後世に残していこうとしているか直接お話を聞く機会があり、地域の文化や伝統の継承について改めて考えさせられました。地域の課題解決に直接つながるかどうかはわかりませんが、ただ教わるだけではなく、私たちなりの視点から表現方法や発信情報を提案するなど取り組めることはあると思います。誰かがやったことに上塗りするのではなく、地域の特性やその時代に沿った解決策を考えていきたいですね。秋田では、学生生活と並行して様々な活動に参加していれば、自然と地域とのつながりもできてきます。

進化を続ける「AIUエコシステム」~未来のAIU生へ

カセム:私の個人的な考えですがAILAは、日本の文化に根差したリベラルアーツの新しい潮流になるのではないかと期待しています。そのためにもぜひ大学の外にも積極的に機会を求めて、地域とのつながりを持っていきたいですね。最後にAIUの先輩として、未来のAIU生に向けてメッセージをお願いします。

赤羽:AIUの入試は知識量を問うのではなく、答えのない問題をどう捉えてどう表現するか、そういう能力を見極めようとする大学だと感じ、ここに進学したいと思いました。そういったことに共感する高校生の皆さんにはぜひ入学してほしいです。

坂藤:AIUはチャレンジ精神を持ち、自分の核となる価値観や考え方を常に持っている人が多い大学です。私自身その魅力にオープンキャンパスで触れて、AIUに入りたいと思った一人です。AIUを目指す理由は皆それぞれですが、単に英語が上達するだけではなくて、人として大きく成長したいと考えるならAIUを選択することを視野に入れてほしいです。

並木:もしAIUへの進学を迷っているなら、ぜひ一度キャンパスに来てみてください。東京で育った私にとって、森に囲まれたキャンパスでの生活は、魅力的な一方で、生活のイメージがつかず不安でした。実際は、知的好奇心に溢れている学生、24時間開館している図書館などを目の当たりにし、学修環境が整っていることが感じられました。課外活動の面でも都会の大学では経験できないようなことばかりでした。AIUに来ればきっと、「私ってこんなことに情熱的になれるんだ!」という、新しい自分を発見できると思います。

谷地田:AIUは勉強する環境、提供している授業、切磋琢磨できる仲間、教授陣、世界のトップレベルの大学に留学できる制度など、自分を大きく成長させてくれる環境とリソースを幅広く提供してくれます。現時点で英語ができるかどうかは気にしなくていいです。大学での4年間を自分が成長するための時間と捉えているのであれば、AIUでいろんな挑戦をして充実した学生生活を送ってもらいたいです。

カセム:今日はAIUの卒業生と在学生が一緒になって意見を述べ合い、お互いに良い刺激になったことでしょう。私もAIUは開学以来、共通の理念のもとに、卒業生、在学生、関係者が一体となって作り上げてきたコミュニティであることを再認識しました。ここに未来のAIU生も加わって、より良い社会を創るための力を生み出す場所となるのではないでしょうか。本日はありがとうございました。

※この原稿は大学案内パンフレットに掲載した企画記事をウェブサイト用に再編集したものです。