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映画『バカ塗りの娘』の上映会を行いました

※このレポートでは、映画の内容に触れています。

2023年11月29日(水)、秋田県秋田市のALVEシアターにて、鶴岡 慧子監督をお招きして映画『バカ塗りの娘』の上映会を開催しました。

映画の上映後、監督の舞台挨拶、および観客とのQ&Aセッションを行い、映画のテーマへの理解を深める学修の機会となりました。

映画の宣伝ポスター
映画『バカ塗りの娘』のポスター(提供:ハピネットファントム?スタジオ)

この映画は、青森県の伝統工芸「津軽塗」を題材にしています。完成までに多くの工程を必要とするため通称「バカ塗り」とも呼ばれる津軽塗。そんな津軽塗の職人の娘は、次第に津軽塗の道へ進みたいとの思いを強くしていくというストーリーです。地域の伝統文化を感じられるとともに、家族の物語やジェンダーロールの問題、ジェンダーの多様性やサステナビリティなど、AIUの学生が普段から関心を持っている話題も多く含まれています。そしてこれらの話題は、2023年度のテーマ別ハウスそれぞれのテーマにも関係しています。

映画『バカ塗りの娘』は海外の映画祭にも広く招待されていて、今回、このイベントのために英語字幕版をご用意いただきました。英語字幕を付けたことで、より多くの学生に楽しんでもらえる貴重な機会になりました。映画の配給会社、および劇場のご協力により、当初この映画の上映予定がなかった秋田市での上映が実現しました。

映画監督からの舞台挨拶やトークイベントなど、満足度の高い経験になったようです。

イベント参加者のコメントをいくつかご紹介します。

ジェンダーに対しての監督の捉え方、表現のアプローチがとても好みでした。ドラマや映画にありがちな、カミングアウトをドラマチックかつ悲劇的で衝撃的に描く表現方法とは全く違う、サラッと生活に滑り込んでくる表現方法がとてもリアルに感じました。

映画はもちろん、監督の舞台挨拶セッションもとても良かったです。これまで舞台挨拶を生で見たことがなかったため、監督ご本人から映画に対する思い入れや裏話等を聞くことができ、もう一度始めから映画を見てみようという気持ちになりました。

全体的にすごく心がほっこりする映画でした。トークセッションでは、鶴岡監督の回答の姿勢(飾らない感じ)がすごく好印象でした。また、映画に込められた想いも聞くことができ、もう一度この映画を見たら見方がまた変わって面白いかもなと思いました。

映画を観るまでバカ塗りのことは全く知りませんでしたが、時間をかけて何度も丁寧に塗り重ねることで様々な模様?色が出来上がっていくことに感動して、バカ塗りそのものにもとても興味が湧きました。漆を塗る音や作業をする工程の音がとても心地よかったです。

この映画を見ながら、色々なことを考えていました。どれも自分の境遇と重なる部分があるというか、田舎ならではの文化や、そこで暮らす人たちの生活、それぞれの人たちの思いが、本当にリアルに描かれている作品だったからです。そのためか、どの登場人物にも共感できる部分があり、他の映画では味わったことのない感覚がありました。

映画とセッションを通して、社会での多様性の在り方や時間の尊さなど様々なことを考えさせられました。映画鑑賞後も自分の考えをさらに深めることができました。

会場の写真
「何でも聞いてください!」とおっしゃる鶴岡 慧子監督へ、学生たちが様々な質問をしていました
鶴岡 慧子監督の写真
朗らかに、そして本当になんでも答えてくださった鶴岡監督

Q&Aセッションでは、学生から積極的に様々な質問が飛び出しました。

津軽塗についての質問に対し、鶴岡監督からは同じ作り手としてこのような工芸品を世に送り出したいと思ったきっかけや、漆の概念を覆すような津軽塗の多彩な色の表現など、伝統工芸について知らなかったお話をたくさん聞く事ができました。

また、「現代社会に合わせてアクセサリーやスマホケースなどに津軽塗を取り入れている融合もおしゃれで素敵だが、津軽塗を知れば知るほど、伝統的な物がおしゃれじゃないかと気がついた」と話されていた事も興味深い場面でした。伝統的である事と現代的である事、両方のブレンドがこの映画の特徴とされている部分ですが、そこに通ずるものもあり、様々な社会的トピックへも繋がります。

留学生からは「自分の国だったら、ジェンダーの問題はこんなに家族に受け入れてもらえないと思う」といった意見もありました。それに対し鶴岡監督は「日本でも現実にはもっと困難だと思っていましたが、映画の中でより身近に感じられる表現をすることで、観た人の理解や想像力を豊かにする一端になれば、そこに意味があると思っている」と話されていて、国の文化による感覚の違いも話題となりました。

監督と学生たちの写真
左から、通訳をしてくれた大学院生たち2名、鶴岡監督、司会の学生課スタッフ

イベントを終えて鶴岡監督からメッセージをいただきました。

本作は、とくに若い方たちに観てもらいたいのですが、なかなか若い方たちをターゲットにした宣伝をしていなかったり、そもそも若者の映画館離れが激しいので、あのような場を作っていただけたのは、望みを叶えていただいたような、そんな気がいたしました。すばらしい質問もバンバン出してくださり感無量でした。本当にありがとうございました。

秋田までいらしてくださった鶴岡 慧子監督、上映会実現のためにご尽力くださった映画の配給会社、ALVEシアターの皆様、Q&Aセッションでの通訳を担ってくれた大学院生の皆さん、多大なサポートをありがとうございました。

『バカ塗りの娘』

映画は全国公開中です。
配給:ハピネットファントム?スタジオ
(C)2023「バカ塗りの娘」製作委員会